より よく 生きる

よりよく生きるために

本・梟のシエスタ

日本国内から出たことがない私であるので、当然スペインにはいったことがない。スペインと言われて思いつくのは、フラメンコとアンダルシアの向日葵と、そしてシエスタであろうか。シエスタとはスペインの習慣のひとつで、頭をよぎるのは昼寝のことだが実際は昼休憩のことであるので、必ずしも睡眠をとるというわけではないらしい。まだ実家でTVを習慣的にみる生活をしていたころ、世界中の実際に行ってみたらこんな国だった…的な番組をよくみていた。番組タイトルもそのままだったように記憶している。たしかその番組でスペインの回で シエスタ中は物音を絶対に立ててはいけないというようなシーンをみたような気がする。ほう。昼寝の妨害にならないように町中が静かになるのは、良い習慣ではないか。日本にも導入してほしいものである。

はてさて、何故スペインの話などを唐突に始めたのかというと、また例によって読書中 その土地に想いを馳せたからである。ネタバレを交えつつ、読了した本について綴ろうと思う。

梟のシエスタ

著:伊与原新

 

学長選挙の迫る地方国立大学に新たに赴任してきた風変りな研究者・袋井准教授。昼夜逆転の生活を送り、昼間は眠そうで不機嫌。しかも、ときどきアルコールが入っている。

嫌われてもひかれても気にしない、型破りな「フクロウ」は、閉塞感漂う学内のムードをものともしない。次々とトラブルに首を突っ込み、教授たちのスキャンダルを暴きたてていく。彼の目的は、一体何なのか?

異色のアカデミック・エンタテインメント。

 

概要にもあるようにこの本は、とある地方国立大学が舞台となる。主人公となるのは34歳の心理学講師 吉川。派閥争いや、大学の組織改革などに巻き込まれていくのだが、それを解決していくのにフクロウという人物がキーとなる。このフクロウこと袋井准教授がなかなかにいいキャラクターをしている。「ほう」とことあるごとに声に出すのだが、そのバリトンボイスが大塚明夫さんで再生され、もう少しで惚れてしまうところであった。一筋縄ではいかない、実際に目の前にいれば やっかいな人物であるのだが、ミステリアスでかっこよい。主人公の視点で描かれるこの物語は、その袋井のミステリアスであり、難解な面が良く描かれていると思う。濃いのに主張し過ぎないキャラというのは、どうしてこうも趣があるのだろうか。

 

私は現在、とある大学の図書館司書をしている。今年の6月までも、また別の国立大学機関内にある図書館で司書をしていた。図書館という狭い空間で働いていたため、大学内でのこういった派閥であったりというものは知り得なかったが、当然領域毎の違いや癖のようなものがあった。ちょうど私がいたときに学長選があったが、似たようなことがあったのかも(実際はないと思うが)…と妄想すると、少し楽しい。今勤めている大学ではどうなのだろうと考えてみるのも楽しいものである。学長は、領域は…。小説そのものも面白かったという点もあるが、私自身の環境に置き換えることができるので、尚更楽しめたように思う。

 

最近、伊与原新さんは私の好きな作家のひとりといえるようになった。文章も読みやすく、解りやすく、好奇心がくすぐられ、そして展開も面白い。梟のシエスタも淡々と進むのかと思いきや…であったので、とても楽しめた。著者は理系のイメージが強いが、今回のような構成であれば文系設定もいけるようだ。むしろ文系領域ならではのネタも出てきて、伊与原さん自身の領域の広さに驚愕である。少しずつであるが、他の作品も読み進めていきたいと思う。

 

今年ももうあと10日ばかりである。あと2冊は読みたいと思っているので、年末の掃除が終わればゆっくりと読もう。今はこれまで読んだことのない著者の作品を読んでいるが、お気に入りの作家になるだろうか。楽しみである。