より よく 生きる

よりよく生きるために

本・あなたの人生、片付けます

もともと、私は片付けができる人間というわけではなかった。むしろ片付けというものが苦手で、所謂「汚部屋」状態だった頃もある。部屋の数か所にブラックホールのようなゴミ溜めが存在し、床に足の踏み場というものはなかった。飲み散らかしたペットボトルがころがっていたし、部屋の照明をつけても どこか薄暗い部屋だった。クローゼットの中には山のように洋服が存在しているのに、お気に入りといえる服も着たい服もなくていつも同じものを着ていた。常に体がだるく、いらいらしていた。

両親は結果は求めるが、方法は教えてくれない人たちだった。もしかしたら そうしてくれたこともあるのかもしれないが記憶にはない。常に片付けられないことを叱責され、脅しや暴力で「せざるを得ない」状況でいた。妹も私同様に片付けができないでいたので、どちらかが母親の逆鱗に触れると芋づる式にどちらかも巻き添えを食らう。かといって、両親が片付けができるかといえば、できない方に分類される。常に家には「いつか使う かも しれない物」にあふれていた。賞味期限の切れた食材、昔着ていた(たぶんバブルの頃)であろう洋服やスーツ、何に使うのかもわからないケーブル、私たちが幼いころに使っていた玩具もろもろを 屋根裏収納なんていう無駄なものまで作って収納していた。

今だから思うことなのかもしれないが、あの頃の「私自身」の精神状態は壊滅的だった。十代後半では自殺未遂を繰り返し、「私自身」というものを紛失してしまい、周りにいる人全てに迷惑をかけた。あぁいう精神状態が部屋に反映されていたのかもしれないと今は思っている。最近も当然不安定になることもあるし、いまだに希死念慮が消えるということはない。それでもある程度安定しているし、自分で折り合いをつけ、機嫌取りができるようになった。今の私の部屋がそれに反映されているように思う。

 

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今はこのときよりさらに物が減っている。また改めて私の部屋を自慢したいと思う。部屋は自分の精神状態を移す、鏡のようなもの。そう私は思っている。

 

はてさて、それでは今回読んだ本を紹介しようと思う。

「あなたの人生、片付けます」

著:垣谷 美雨

30代OL、妻に先立たれた老人、子どもに見捨てられた資産家老女、ある一部屋だけを掃除する汚部屋主婦…。片付け屋・大庭十萬里は 物を捨てられない、片付けられない住人たちの前に現れる。この本を読んだら、きっとあなたも部屋を片付けたくなる!

 

主人公の片付け屋・大庭十萬里は部屋をただ片付けるのではなく、何故片付けられないかという点に着目し、人生の片付けもしてくれるらしい。「片付けができない」と一言でいっても いろいろある。たとえば先述した私の汚部屋状態であったり、両親のように物を捨てられない故に物が溢れている状態であったり。中にはその人が持つ気質的なもののせいで「片付けができない」という状況もあり得る。何故片付けられないかの原因が解れば、それを解消することでその人の人生で壁であったりブレーキになってしまっているものを消したり、小さくすることができる。

十萬里さんはその家に訪れて、部屋を見て、片付け方の指導をする。片付け方は家庭によってかわる、だから巷にあふれる片付け本ではカバーできないところを個人指導という形でフォローしている。ただあくまで指導であって、彼女は基本手を出さない。捨てるのも本人であるし、掃除するのも本人である。部屋に蓄積しているものというのは、その人のコンプレックスであったり執着であったりする。それは綺麗な思い出という場合もあるが、ときたま「呪い」のようにその部屋に居座っていることがある。当時の私の部屋は自分のコンプレックスを解消するであろう何かをとりあえず買い込むことで逃避行動にでていたのかもしれない。

そういった片付けができない人達の本質であったりがよく描かれていて、一見コミカルに見えるその描写が実はリアルで恐ろしいことに後になって気づく。部屋があきらかに汚部屋であるのに、30代OL女性はさして自身の部屋が汚くはないと最初は思っている。しかし掃除をしていく上でどれだけ部屋が汚れてしまっていたのかを知る。そういった「私はいたって普通で、大丈夫である」といった思い込みや、その人がもつ「異質さ」や「偏見」のようなものに気付いていない人たちの描き方がとても素晴らしいと思った。当然 片付けることが正義ではないのだが、こういった片付けを通してその人の心の安寧が少しでも保てるのならば…と思う。

もちろんこの物語はフィクションであるので、実際はこんなにうまくはいかない。人生の問題点もそんなに簡単に解決したりはしない。私の場合は何年かかっただろうか。考えるのも恐ろしいが。

ただ今、片付けられなくて、人生の何かに苦しいと思っている人がいるならば、これくらいラフに読めるのはとてもいいと思った。これは小説であって、片付けの実用書のような成功サンプルを読んでいるようなそんな感覚だった。

 

さ、私も部屋を見直そう。