より よく 生きる

よりよく生きるために

映画・キャロル

赤い口紅と仄かに香る香水に憧れた時期がある。テラテラとグロスの塗られたものではなく、あくまでマットな赤。そして、その人が通り過ぎた後、風にのって微かに香るくらいの爽やかで、どこか甘みのある香り。それは若かった私には大人の女性の象徴であったり、自立の象徴であったり、とにかくとても特別なものに見えた。普段はリップクリームだけで口紅をささないし、さしたとしてもオレンジかピンク色が私の唇には似合うらしい。香水も最後につけたのはいつだったか、大学生の頃だったか…少なくともこの10年ほどは購入すらしていない。それでも淡い憧れはいまも心の片隅に、ひっそりと腰を落ち着けているらしい。

 

映画 キャロルについてネタバレ交えて綴っていこうと思う。

1950年代ニューヨークを舞台に女同士の美しい恋を描いた恋愛ドラマ。

太陽がいっぱい」などで知られるアメリカの女性作家パトリシア・ハイスミスが52年に発表したベストセラー小説「ザ・プライス・オブ・ソルト」を映画化。

 

1952年、冬。ジャーナリストを夢見てマンハッタンにやってきたテレーズは、クリスマスシーズンのデパートで玩具販売員のアルバイトをしていた。彼女にはリチャードという恋人がいたが、なかなか結婚に踏み切れずにいる。ある日テレーズは、デパートに娘へのプレゼントを探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルにひと目で心を奪われてしまう。それ以来、2人は合うようになり、テレーズはキャロルが夫と離婚控訴中であることを知る。生まれて初めて本当の恋をしていると実感するテレーズは、キャロルから車での小旅行に誘われ、ともに旅立つが…。

(映画.com より参照)

eiga.com

 

最近は暇があればYouTubeをみている。時間を浪費しているようでよくない。せめてインプット・アウトレットにつながるものを…と思ったりもするが、やはり好きなものでなければ続かない。マイブームは藤原しおりさん(元ブルゾンちえみさん)。

www.youtube.com

#41ではかねてから待望されていたといっても過言ではない、映画レビュー。その作品が「CAROL」だった。そんなわけで、大体のあらすじはしおりさんの配信の中で聞いたうえで作品に触れた。

 

作品を観終えてまず思ったことが、「美しかった」だった。世界観、ミザンス、音楽、キャストの美しさ、繊細な表情の機微までがクリアにうつるさまが「美しい」ということだった。全体的に台詞は多くないと思われる。淡々と、必要な台詞だけが使われる。しかしその際の表情や間、仕草でそれらを全て補填してしまうのだからすごい。やや前半、間延びしている感も否めないが、行間を読む楽しさを残してくれる映画は見ていて飽きない。むしろそのためのテンポなのでは???とすら勘ぐってしまった。

あと個人的に推したいのは衣装のすばらしさだろうか。キャロルもテレーズもとにかく衣装が可愛い。

キャロルの美しくカールしたブロンドにはパキッとした洋服がとても映える。落ち着きのある赤いコートに身を包むキャロルは神々しく美しいし、まるで次縹のような淡いブルーの洋服も洗練されていて、実に気品がある。なのにどちらも大人の妖艶さというか、落ち着きのようなものを感じる。

打って変わってテレーズはガーリー。特に小物使いが可愛い。黒のヘアバンド、ベレー帽、チェックのマフラーが年頃の少女感を醸し出しているし、Aラインのワンピースが実に愛らしい。

衣装だけでも、ずっと眺めていたい。気になる方は以下のサイトを見てほしい。

www.cinematoday.jp

 

あらすじでも説明したが、この物語は1952年、ニューヨークが舞台となっている。今も当時の時世もあまり詳しくはないが、作中の言葉をそのまま信じるのであれば、同性愛者の方々への扱いはあまりよいものではなかったらしい。同性愛=病気としてとらわれていたり、当時の今も昔も圧迫された世界だったらしい。

そんなキャロルには離婚控訴中の夫がいるが彼は彼女のことを「お飾りの妻」としてしか認識していない。言うことを聞いて当たり前の存在として接しているところが節々にあった。切ない。そんなキャロルと夫を繋ぐ唯一の紐が娘であるが、夫はキャロルからその娘を奪おうとする。そんな失意のなか、キャロルはテレーズとともに小旅行へと旅立つのであった。

 

打って変わってテレーズだが、自分のランチも決められないほど優柔不断な女の子。自分が何をしたいのか、誰を愛しているのか、まだクリアになっておらず全体的にぼんやりとしている。恋人はぐいぐいと先に進もうとするが、テレーズはそれにどこか違和感を感じ「頼んでいないことを」押し付けられているが、それにもはっきりと反応できないでいる。そんなテレーズだからエレガントでミステリアスなキャロルに憧れのようなものを抱いたのかもしれない。それから少しずつ関係を深めるにつれて、恋心となって揺れ動く姿が初々しく、若い美しさがあった。

 

些細な縁からはじまった2人は、その後 小旅行を始める。いつ戻るのか、どこに行くのかすら決まっていない。ただただキャロルは車を走らせる。

(余談だがこのキャロルの車がまたいい。1949 packard super deluxe 8のカスタム車だそうな。ベージュがかったレトロなデザインが素敵で、実際の車を所有するのは難しいがminiatureがあるのであれば欲しいくらいだった。)

 

旅の最中にある女子会のような雰囲気も2人が愛らしくてならない。香水をつけて香りをかぐシーンもよかった。そして、2人の仲はどんどんと深まり、ついに結ばれる(…と表現していいのか?)シーン。性行為シーンだというのに、どうしてこんなにも美しいのだろうか…汚らしさ、といってしまえば語弊があるかもしれないが、それらを一切感じさせない、清らかなシーンにすら見えた。その後、キャロルが言った「私の天使」はまさにだった。2人とも美しかったのだ。

その後の展開としては、キャロルが一方的に別れを切り出すのだが…。そのくせ「待っていて」といえばよかったと、女々しさのようなものを出すキャロルがなんとなく可愛い。逆にテレーズは一皮むけて、自分で考える力や、意思のようなものをもったように思う。「花開いた」とは本当にいい表現で、まさに開花したガーベラのように艶やかだった。本当に観てよかった。

 

人からオススメされたもの が実は私は苦手だ。圧のようなものを感じてしまって、それをこなしてしまったら感想を伝えなければならないのでは?楽しまないといけないのでは?と不必要なことまで考えてしまう。しかし、今回は実行にうつして本当に良かった。ランキングをつけるということがあまり好きではない私だが、今年みた映画のなかでも確実に上位にランクインしそうである。

 

赤いマットな口紅は学生時代は浮いてしまって似合うことはなかったが、32歳になった今なら似合うだろうか。キャロルのような美しさを纏って生きていきたい。